近未来将棋小説 紅に王手

織田八之助が江戸時代と現代を駆け抜ける梵暮ら物語り

バナナマン

「八之助さん 今日 BNNありますよ」


「お~ 英男 」


八之助は英男の肩を叩いた


「BNNか~ 梵とBNNは相性いいからな


 重広さんはBNNいくんでしたっけ?」


「BNN?」


「英男が作ったバナナを乾燥させてやつですよ


 きのこみたいな飛びです」


「あ~ 幻覚系ですか 浮世絵と合いそうだな 軽く頂こうかな」


「はい」


八之助は重広に BNNを半分渡し残りを自分でほうばった



八之助 重広 英男も 太鼓を持ち太鼓の輪に加わった



トン ド ド  トン ド ド


トン ド ド  トン ド ド




太鼓と笛の音色が 微かに響く月明かりの麓 今宵の天楽 良き音なり♪

ホトケシンジゲート


維新天楽隊は天童者を中心にこの町に代々受けつがれている音楽隊だ


人の誕生や生命の死 豊作の喜びや雨を求め 時に楽しく宴 時に内面との対時に



呼ばれし地で 言霊は聖霊なりきり 宿す音に 我 己を知る




トン トン トトン トン トン トン



今日もいい音だ 八之助は想う   トン トン トトン トン トン トン



八之助は 太鼓にのってフリースタイルで詩を読んでいた   


トン トン トトン トン トン トン




まてど されど このままで


果てぬ己に 相打ち申うす


願わく 天 和平の道 なりけり

曇り

仏光寺の敷地内には立派な木々が立ち並ぶ


松や紅葉が楽しげに風に揺れている


苔が生い茂る石道を進むと 本堂だ



本堂の中からは 太鼓の音が聴こえる 心が弾む



「よっ ブラフマン」



・・・ 本堂の脇の石段を振り返ると 



「あっ 重広さんじゃないですが 一服中ですか?」


「です 八之助さんもどうですか?」


「です」



重広は江戸から来ている浮世絵画家で 数ヶ月の滞在の予定でこの町にいた



「ぷっ は~  重広さんの梵は美味い!」


「そうですか いつも 八之助さんからご馳走になっている梵も最高ですよ」


「ぷっ は~ 重広さんの浮世絵はぶっ飛んでるからな~」


「まっ 将棋駒とは表現方法は違いますが 八之助さんの駒も相当ぶっ飛んでますよ 


 そうだ 近い将来 江戸で共同個展をやりましょうよ」


「いいですね 夢が広がります」


「ぷっ は~   中に行きませんか 一曲じゃむりましょう♪」

路上の格闘技

「ちょっと 待ちんなまし この辺じゃ見かけね~顔だな」


「ほっといておくなまし 名も無き旅人でござんすよ」


「・・・おぬし 薩摩の男か」


「・・・それが どうか いたしましたか たとえば おいどんが薩摩者だとしたら」


「聞き捨てならん ここは武士の情け 将棋で勝負をつけようぞ」


「うけてたつ ばってんが」



この時代 路上での喧嘩は将棋が一般的だった



「7 六 歩」


「そうきたか 薩摩者よ  3 四 歩」


「フッ 受けてたつごわす」



突如 路上で始まる命をかけた1局にプライドをかけた男達の時代でもある

in side

山の谷間を清々しい風を通り抜けていく


遠く 朝日連峰の奥底がバイオレットピンクに染まっている


八之助は 夕陽観察が趣味の一つであった



・今日の夕日は88点 中々の夕日空だ 今年こそは海を見てみたい・



舞鶴から 維新天楽隊の練習場 佛光寺までは 10分程の距離だ



ハッピー蕎麦が緩やかに効いてきた



山の鳥達の鳴き声が隅々まで聴こえてくる



チュン チュン チュン  ホッ ホッ ホッー








♪ ♬ 🎶 ♪ ♬ 🎶 ♪ ♬ 🎶 ♪ ♬ 🎶


トン トン トトトン ♪ トン トン トトトン ♪ 


♪ ♬ 🎶 ♪ ♬ 🎶 ♪ ♬ 🎶 ♪ ♬ 🎶


維新天楽隊の太鼓の音が聴こえてきた ♪