近未来将棋小説 紅に王手

織田八之助が江戸時代と現代を駆け抜ける梵暮ら物語り

梵栽

「あっ 八之助さん 梵あります?」


 「ありますよ いっぷく行きますか?」


「はい」



八之助と千夜子は 沼を一望できるベンチに腰を下ろした



「ぷっ は~   


      八之助さんは 酒 飲まれるんですか?」



「酒ですか 飲んだ時ありますよ どうしてですか?」



「最近 城下町の若旦那達が酒にはまってるみたいで 


 飲もう 飲もうって私も誘われるんですが 私 酒が どうも あわなくて」



「俺は  梵派です   酒は雑になるというか おうざっぱになるというか


   ぷっ は~     梵は音楽にも合うし 将棋にも合うし 
   
          毎年神社にも納めてのは梵ですしね」



「ですよね      八之助さんご馳走さまです 今夜は良い夜になりそう


   八之助さんも気を付けて 行って下さい」



「OK です」

千の夜に 花いちもんぺ

「八之助さん」


後ろを振りむくと 千夜子ちゃんが手を振っていた


「あ 千夜子ちゃん」


千夜子ちゃんは山の麓に住んでいる歌好きの女性だ


「カッパさん いないみたいですね」


「そう いないみたいなんだ 温泉に行かないかと誘いに来たんだが」


「温泉?」


「そう 蔵王に行こうと思って」


「今から」


「そう 今から 泊まりがけになりそうだな」


「ほんと 八之助さんって 自由な人   風みたい


  八之助さん また今度 異国の言葉を教えてくださいな」



「OK」


「OK?」


「OK 分かりました 大丈夫ですよって事ですよ」


「・・・ O K  では ごきげんよう」


「ハ ハ ハ ごきげんよう」



千夜子ちゃんはこの地域のアイドル的女性である

穴熊突破口

チュンチュンチュン


作業部屋の窓から小鳥の囀りが聞えてくる清々しい空気漂う一時




駒制作の材料 漆がそろそろ切れそうだな


漆山に行くなら 久しぶりに温泉に行きたいところだ


カッパと猿乃助を誘ってみるか



漆山町までは 7マイル程の距離だ



八之助は 風呂敷にゴザと梵と将棋駒と蜜ロウを包み 麻袋に入れて家を出た




家の裏 山の東側のカッパがよくいる愛宕沼に立ち寄ってみる



静けさと風通る水面に呼びかけた



「カッパ おるか~?


 カッパ おるか~?」




・・・  シーン

イマジネーションブルース

知るとは想う事なり 願うとは知る事なりけり



八之助は時として思う 地球は丸いらしい 


では なぜ 人は落ちぬのかと


時として考える 宇宙とはと


八之助は知っていた


この町以外にも町がある事を


海があり 違う大地がある事を



武士として思う


見果てぬ地 アメリカーノ ヨロッパーノ パレスチナーノ


などという地にも 和平が訪れる事を 心して願うなりけり



八之助は 武士道 仏教をベースに 独自の考えを持っていた


「ぷっ は~  俺は先輩武士をもちろんリスペクトしているが


 和平を願う武士道が世の中を変えれるんじゃないかと思もうんだ


 5 三 飛車 成」


「く~ 厳しいでござるな  


 八之助さんの考えはもっと 多くの人に聴いてもらいたいでござるな」


「カッパ 俺は武士であり 駒も作らねばならぬ


 サムライをやめて禅の旅に行けというのは あまりにもかぶいているぞ


 カッパ 王手だぞ」


「く~ 三枚取りでござるか」


「だな」


トルクカルマ

ドォ ドォ ドォ ドォ ドォ


ドォ ドォ ドォ ドォ ドォ


ドォ ドォ ドォ ドォ ドォ



「ばんさんや また 聞えるな」


「そうだなや じいさんや 面白山の方から聞えるだにゃや」